2011年7月12日火曜日

セシウム入り牛肉

南相馬市から出荷された牛肉から高レベルの放射性セシウムが検出されたという。
テレビのニュースでも、新聞でも、「配合飼料が不足していたため、稲ワラを食べさせた」と報道している。しかし、私の常識からすればそんなことはあり得ない。これは「誤報」か、だまされているかどっちかだ。誤報とすればメディアがあまりにも情けない。まあ、原発事故の最初の頃はまともな記事がほとんどなかったから、宜なるかな、である。日本のマスメディアには理科系センスのある人がきわめて少ない。だまされているとすれば、生産者のたちが悪いが、それぐらい見破れなければマスメディアとしては失格だ。


牛の配合飼料は、トウモロコシ、大麦圧扁、小麦ふすま、大豆粕など穀物かその副産物でできている。しかし、牛は穀物だけを食べていたら死んでしまう。必ず繊維質が必要だ。牛は反芻動物である。第1胃(ルーメン)にはプロトゾアと呼ばれる微生物がいて、その働きで発酵し揮発性脂肪酸(VFA)を産生する。そして、繊維質の飼料が胃壁を刺激することにより反芻が起こり、唾液によって中和され、さらに発酵が続く。反芻獣の消化管は、いわば「連続発酵タンク」なのである。もし、穀物だけを与えたらルーメンは急激に酸性になり、プロトゾアは死滅し、やがて牛も死ぬ。

だから、稲ワラなどの粗飼料は絶対に必要なのである。肉牛の場合、粗飼料の代表は稲ワラである。酪農では高泌乳量でかつ乳脂率を低下させないために、稲ワラよりも品質のいい粗飼料、例えば、チモシー乾草、アルファルファ乾草、ヘイキューブ、全粒綿実などを与えるが、肉牛ではそのような購入粗飼料を多く使う事例は少ない。ニュースの映像から見ると、購入したスーダングラスのようなものは食べさせている。まあ、あってもそんなところであろう。

もちろん、東電に一番の責任があるとは思う。しかし、汚染されたことがわかっているワラを毎日食べさせ、その牛を出荷したことは、生産者に重大な責任があると思う。同情はするが。

このように汚染された牛肉の流通を阻止するために、全頭検査という話が出ている。しかし、この検査はガイガー・カウンターで表面の線量を測るようなものではできず、ゲルマニウム半導体検出器が必要だ。今回出たのは、芝浦市場だと思うが、毎日数千頭の枝肉がぶら下がるこの市場で、全部からサンプルを採取し、分析をするのは不可能だ。検出器は都に数台しかないだろうし、分析に要する時間も1検体1時間程度かかると聞く。

現実的なのは、東電からの補償が受けられるまでの間、無利子で運転資金を供給するような仕組みをつくり、十分な資金で購入粗飼料が確保できるような体制が必要なのである。私は、事故から間もなく、緊急にこのようなことをやるべきだと書いた。しかし、そのような現実に対応しようとせず、原発の稼働を人質にとって、担当大臣をだましてまでも総理の椅子に座り続けるための政治ゲームをやっているようでは、菅直人はまさに万死に値する。

いい加減にしてもらいたい。

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