2015年1月1日木曜日

風街ろまん

12月30日 NHK BSではっぴいえんどの番組をやっていた。
大瀧詠一が亡くなってちょうど1年である。

番組では、彼らのセカンドアルバム「風街ろまん」に焦点を当てて紹介していた。
佐野史郎と高田漣、それから星野源が解説役をしていたが、高田漣も星野源もはっぴいえんどが活動していた頃にはまだこの世に誕生していない。



このアルバムが「名盤」になったのは、松本隆が作詞家で売れっ子になり、細野晴臣がYMOで有名になり、大瀧詠一がロングバケイションでミリオンを記録し、その後はっぴいえんどが見直された結果なのだ。

佐野史郎も全く同じことを言っていたが、「はっぴいえんど」と言ってもクラスの誰も知らない頃、この音楽が理解できたのは誇りであった。私の同級生では当時(解散直後)2,3名しか知らなかった。

高校生から浪人時代にかけて、はっぴいえんど系の音楽をたくさん聴いたけれど、ワシがちゃんと歌えるのは細野晴臣の歌だけだった。音域がぴったりなのである。大瀧詠一にしても鈴木茂にしても高すぎて歌えない。
「三時の子守歌」はギターを弾きながらよく歌ったものだ。これは「トロピカル・ダンディ」に入っていた。


だいたいロックの歌手はみんな声が高い。
高い声でシャウトすると、周りの楽器に埋もれないんだそうである。
だから音域の低いワシには歌えない。歌いたかったのだが。イヤ、今でも歌えたら歌いたいのである。
ワシはブルーグラスを始めてからずっと低音部担当である。ブルーグラスでは「バリトンボーカル」と呼んでいるが、これにはそれなりに自信を持っている。
音域の低い細野晴臣も、ワシと全く同じように悩んだらしい。

その細野が、ジェームス・テイラーをきいて「これだっ」と思ったという。その話は以前ニュー・ミュージックマガジンか何かで読んだことがあった。
番組ではsweet baby jamesを流していた。この曲は、私にとってはseldom sceneの曲なんだが、そうかジェームス・テイラーの曲だったんだ。

「風をあつめて」が生まれるまでの話はとってもおもしろかった。
「手紙」という、「ゆでめん」の時にボツにした歌がもとになっているという。
「手紙」は音源を持っていて聞いたことはある。
細野さんは「何もかも嫌い」と言っていたが・・・。
松本隆によれば「風をあつめて」という言葉以外全てボツにしたのだそうだ。

あの頃、あれだけ聞いたのに、今まで細野さんのボーカルが「ダブルトラック」だとは意識していなかった。
ユニゾンで2トラックに録音する、ビートルズがやっていた手法である。
一部分ハモっているところもあるのだが。


「風街」というのは、すでに失われてしまった東京の風景、当時の少年たちの記憶の中にだけある町なんだそうだ。
松本隆は港区青山、細野晴臣は港区白金の出身だ。

ワシは住んでたわけではないが、母の出身地だったので、青山には子供の頃によく行った。
小学校高学年になるとひとりで「国電」に乗り、信濃町で降り、10番の都電に乗って祖母の家まででかけた。
ひとりで泊まりに行ったこともあった。
従兄弟たちと神宮球場(第2球場)にもぐり込んで(子供は柵の下からもぐれたのだ)、ただで高校野球を見たり・・・

毎年、青山の家には正月2日に集まって新年会をしていた。
「みちおじちゃん」がダジャレを連発していたあの新年会だ。
お年玉をもらうとすぐに青山通り沿いのおもちゃ屋にみんなで行くのだった。
ピーコックの反対側あたりだったような気がする。

そんなわけでワシは、まだ「おしゃれな町」と呼ばれる前、ベルコモンズもできていない、「キラー通り」という名前もまだない青山の風景をそれなりに濃厚に記憶しているのだ。
だから、何となく「風街」の風景が浮かぶ。
しかし、ベルコモンズが閉店したというのは年齢を感じざるを得ない・・・


「風街ろまん」の中ジャケは都電の風景だ。
松本隆たっての希望でイラストレーターに書いてもらったそうだ。
ワシも都電の走る風景を結構鮮明に記憶している。
信濃町から青山に行くのもそうだが、青山から御茶ノ水に出たこともあった。あれはどう通っていったのかな。赤坂見附から三宅坂に出て靖国神社に出ていたんだろうか?きっとそうだ。
だとすれば、細野さんが言ってた赤坂見附の都電の風景も見ていたんだろうな。覚えてないけど。
赤坂見附は谷の底なので、長いレンズでねらうと絵になりそうだ。きっとそんな風景なんだろう。

鈴木茂の「花いちもんめ」で
「右手の煙突は黄色い煙を吐き、左手の煙突は赤い煙を吐く」と歌っているのは
「細野さんと大瀧さんが仲悪くなっちゃって困っている松本隆」なんだそうな。
知らなかったなあ。

「風街ろまん」を録音中、大瀧詠一は「大手レコード会社からソロデビューが決まった」と言っていたが、キングレコード(ベルウッド)の「大瀧詠一」のことだね。これは持っていない。

昨年は「大瀧詠一を勝手に偲ぶ会」をやったが、今年はひとりで「はっぴいえんど」を聞くとするか。

「はっぴいえんど」好きにはたまらない番組であった。ありがとうNHK。




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