15年くらいは年賀状の往復をしていたのであるが、うちの喪中をキッカケに中断してしまった。今年はワシが年賀状を出したので、その返信であった。
アッコは当ブログで一度触れたことがある。
うちの中学では1,2を争う秀才であり、しかも美人であった。十数年会っていないがきっと今もウツクシイ女性であるだろう。
彼女は、北の国へ引っ越してから、雪景色の写真をハガキにして年賀状を送ってきた。
少なくとも高校生までは、カメラをぶら下げた姿は拝見していないので、だいぶん大人になってからの趣味なのであろう。なかなかいい写真が多かった。
今回のハガキもちらっと見たときは雪原だと思った。しかし、そこに写っていた植物は、雪の中にはなさそうなものであった。
よく見ると、何となく見たことがあるような・・・。
これは絵はがきであった。アンセル・アダムスの手による、ニュー・メキシコの砂漠の写真だ。
アンセル・アダムスの絵はがき |
アンセル・アダムスには思い出がある。
30になって子供ができ、子供の写真を撮っているうちに、再び写真に目覚めた話は以前書いたことがある。
その当時、インター・ネットなどというものは、少なくとも一般に知られているものではなく、ワシはパソコン通信をシコシコやっていた。
PC-VANは有料化された直後から入っており、「写真SIG」はたまに覗いていた。
写真SIGの運営者を含め、主要なメンバーはライカ好きの大人の方々が多く、ライカの話題を見ているうちに、ライカが欲しくて仕方が無くなった。ロバート・キャパの本を読んだり、ライカの本を買ったりしているうちに我慢ができなくなり、ライツ・ミノルタCLを購入した。その当時は、薄給のワタシに手の届く新品のレンジファインダー・カメラなんかなく、かなり使用感のある中古のCLが現実的にもっとも廉価に入手できる「ライカ型カメラ」だった。
「写真SIG」はそんな感じで、ライカ礼賛、エレクトロニクスを駆使したニューテクノロジーはバカにされる雰囲気があった。当時の最新鋭機Nikon f4を使う中高生と思しきお兄ちゃんが論争をふっかけると、無視されるか、あるいは集中砲火を浴び、バカにされたりすることもあった。
そんな中、「くまさん」というプロの写真家の方が、「そんな不毛な論争をするのでなく、表現法に努力したらどうか」という意見を出し、アンセル・アダムスのゾーンシステムの現代的実践方法の講座を始めたのだった。
詳しいことは「アンセル・アダムス ゾーンシステム」でググれば、情報は山のように出てくる。
それまでアンセル・アダムスという名前は知らなかったように思う。
今のように検索すれば写真が出てくるような時代ではなかったから、本屋で立ち読みしたか何か、何枚かの写真を見た。
もっとも私の心を捉えたのは「エルナンデスの月の出」だった。
夕方、暮れかかる暗い空に出た月、山、手前の町並み、見事なトーンであった。
リンクからは写真が見られるが、PC上ではラチチュードが狭いのか、印刷物のような見事なトーンは見られない。
ゾーンシステムはトーンをコントロールする現像法である。
真っ黒なゾーン0から真っ白なゾーンX(テン)まで11段階に分け、どのようにトーンを出すかを現像でコントロールするのだ。
ちなみにゾーンの1段階は露出で1段、すなわち光量で倍違う。そして、真ん中のゾーンVは露出計の基準となっている反射率18%グレイである。
写真家は、対象のどの部分をどのゾーンで表現し、どれぐらいの幅で表現するのかを考えて撮影し、現像せねばならない。
それまで教わってきた適正露出は、どの部分を18%グレイにするようにするか、あるいはそれを応用して全体を白く写すとか、黒く写すということだけを考えるものだった。
ゾーンシステムはアンセル・アダムスが使っていた8×10のようなシートフィルムのためのシステムであったが、「くまさん」はこれを35mmのような36カット一律の現像をしなければならないロール・フィルムに適用するために、イルフォード・マルチグレード印画紙でコントロールすることを提唱した。
その前まで、ライカ教のみなさんに心酔したワタシは、今度はゾーンシステム教に入信し、マルチグレード印画紙と、それをコントロールするためのフィルターを、結構高い金額を払って購入した。
入れ込んだ割にはあまり成果はなかった。
ここに出せるようなものもないような気がする。
というか、マルチグレードで引き伸ばした印画紙がどれで、どこにあるのか今となってはわからない。マルチグレード用のフィルターセットは天袋のどこかに今も眠っている。
すでに引伸機は処分してしまったのに。バカな話だ。
今度、暇ができたらネガを眺めてみよう。何を撮ったんだっけ?
アンセル・アダムスの写真は、古い写真である。
しかし、あのようなトーンの写真はそう滅多にお目にかかれるものではない。
一度、オリジナルプリントを眺めてみたいものである。
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